はじめに
訪問看護の現場では、看護師だけでなく、多職種が連携して患者のケアを行っています。中でもセラピスト(PT ,OT,ST)の役割は非常に大切であり、彼らの専門的な知識や技術を最大限に活用することで、患者のQOL(生活の質)の向上や、より良い在宅ケアの提供が可能となります。訪問看護の各職種との連携を深め、専門性を尊重しつつ、共に患者のための最良のケアを目指していくことが重要です。
R3年度の介護報酬改定においてセラピストの訪問に関して見直しもありましたのでご紹介いたします。
変更点
①単位数に関して
セラピストの訪問の要介護における訪問の単位数が1回(20分)あたり297単位→293単位に減算されました。
また、介護予防の単位数に関しても287単位→283単位に減算されています。さらに介護予防の訪問に関しては利用の開始日の属する月から12月超の利用者に関しては1回に月5単位減算となります。(入院による中断がありかつ医師の指示内容に変更がある場合は新たに利用が開始されたものとする)
②算定要件に関して
セラピストによる訪問看護については通所リハビリテーションのみでは家屋内におけるADLの自立が困難である場合であって、ケアマネジメントの結果看護職員とセラピストが連携して家屋状況の確認を含めた訪問看護の提供が必要と判断された場合に算定できるとなっております。
→ケアマネージャーのアセスメントのもと看護師と連携をとるということが強調されている点が重要になります。
また、訪問看護計画書にはセラピストが提供するものも含め訪問看護の内容を一体的に記載するとともに、報告書には訪問の内容と結果を記載した文章を添付するとなっております。(訪問看護報告書の別添がこれにあたります)
③算定に関する注意点
・1回あたり20分以上、1人の利用者に週6回を限度とする。
→これより通常は週2回60分や週3回40分の提供が限度となります。
・1日に3回以上行う場合は1回あたりが減算になる。
→60分以上の訪問を行うと1回の訪問の単位数が以下のようになります。
要介護 293単位×90/100=263.7 264単位
要支援 283単位×50/100=141.5 142単位
要支援では60分の訪問をすると事業所としてはかなり損となるため40分の訪問に収める方が望ましいと言えます。
看護職員との連携について
看護職員との連携についての重要な点を以下にまとめます
①セラピストの訪問に関してはその訪問が看護業務の一環としてのリハビリテーションを中心としたものである場合に看護職員の代わりに訪問させるものであることを説明し利用者の同意を得る必要がある。(同意は口頭でも酔いが記録に残しておく必要がある)
②訪問看護計画書及び報告書は看護職員と連携をして作成をする必要がある。
③複数の訪問看護事業所から訪問看護を受けている利用者については事業所間で連携を図り作成する。
→計画書等を相互に送付し共有、カンファレンス等で情報共有するなど
④利用の開始時及び利用者の状態変化等に合わせて定期的に看護職員による訪問が必要(評価訪問)
看護師による定期的な訪問(評価訪問)について
上記の④の定期的な看護職員の訪問に関して定期的とは初回、訪問看護指示内容が変化する場合、利用者の心身の状態や家族等の環境に変化があった場合等とされております。また、上記に該当しなくても少なくとも概ね3ヶ月に1度程度は看護職員が訪問し利用者の評価を行う必要があります。
この看護職員の訪問に関しては必ずしもケアプランに位置付け訪問看護費の算定までを求めるものではないが、訪問看護費を算定しない場合は訪問日や訪問内容を記録する必要があるとされています。
ケアプランに位置付け、算定を行う場合はケアマネージャーと連携し、いつ訪問を行うのか等を報告する必要がありますが、記録に残せば必ずしもその必要がないとされています。
もちろん、算定をとった方が事業所としては利益になりますが、3ヶ月に1回の不定期な訪問を日程に組み込み、連携をとり、利用者の負担になることは事業所としてもデメリットと捉えることもできます。訪問して看護師がきたけれど話を聞くだけで何もしてくれなかった、何もしてもらっていないのに請求されているなどのトラブルにならないように算定を取る場合は十分に連携を行い、必要な説明を行うことが望ましいでしょう。
さいごに
訪問看護事業所ではセラピストの役割は非常に大きく、ADLの維持や向上のためには必要になってきますが、必要な制度を理解し適切に運用、算定を行う必要があります。看護師よりも訪問に制限がかかる場合もあるため運営をするにあたっては十分に注意をする必要があり、制度の改定などには十分に注意する必要があるため必ず最新の情報を収集するようにしましょう。
また、制度自体も変わっている最中であるため、記載が曖昧であったり、地域によっても異なることもあるため解釈が異なる場合は該当の自治体に確認をするようにしてください。
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